お知らせ
何を売るかより、どんな価値を届けるか。
野菜は英語で「vegetable」。
よく見ると、この単語の中には「table」という文字がある。
野菜は世界中の食卓に欠かせないものだから、こんな単語になったのだろうか。
気になって調べてみた。
どうやら「table」とは関係がないらしい。
語源はラテン語で「生き生きとした」「生命を与える」といった意味を持つ言葉に由来するそうだ。
なるほど。
野菜は人間が生きていくうえで欠かせないものだ。
そう考えると、こちらの意味の方がしっくりくる。
しかし、野菜という言葉の中に偶然にも「table」が隠れていることに、なんだか不思議な縁を感じてしまう。
世界中の食卓を支えている野菜。
僕たちは、その野菜のことをどれだけ知っているのだろう。
最近、そんなことを考えさせられる一冊の本を読んだ。
梅田みどりさんの著書『野菜ビジネス』だ。
この本は、単に野菜の栄養やおいしい食べ方を紹介する本ではない。
野菜の歴史や文化、品種の成り立ち、生産者のこと、農業の現状、加工や流通の仕組み、さらには野菜の商品価値やこれからのビジネスの可能性まで、さまざまな角度から野菜について紹介している。
普段、僕たちはスーパーに並んでいる野菜を見て、鮮度や大きさ、産地、そして価格で判断する。
今日はキャベツが高いな。
このトマトはおいしそうだな。
そんな程度かもしれない。
しかし、目の前に並んでいる野菜には、そこに至るまでの長い物語がある。
種をまき、育て、収穫する生産者がいる。
品種を守り続けてきた人たちがいる。
鮮度を保ちながら運ぶ人たちがいる。
加工し、商品化し、販売する人たちがいる。
僕たちの食卓に野菜が届くまでには、多くの人の仕事と知恵が積み重なっている。
普段、何気なく食べている野菜も、その背景を知ることで見え方が変わってくる。
そして、この本を読みながら、僕は改めて「価値」というものについて考えさせられた。
何を売るかではなく、その商品からどんな価値を届けるか。
僕は、これがものづくりや商売において、とても大切なことだと思っている。
例えば、同じ野菜でも、スーパーで数百円で売られるものもあれば、贈答品として何千円、何万円という価格で取引されるものもある。
もちろん、品質や味の違いはあるだろう。
しかし、それだけではない。
どこで、誰が、どんな想いで育てたのか。
どんな歴史があり、どんな手間がかかっているのか。
なぜ、その土地で作られているのか。
そうした背景を知ることで、商品の価値はもっと深く伝わるのではないだろうか。
高い価格をつければ、価値が生まれるわけではない。
良いものを作れば、必ず売れるわけでもない。
良いものを作ることと、その価値を伝えることは、別の仕事なのだと思う。
そして、価値を伝えるためには、まず自分自身がその背景を知ることが大切だ。
生産者のこと。
素材が育つ土地のこと。
収穫から加工、流通までの仕組み。
そこに関わる人たちの努力や工夫。
それらを知ることで、伝えられる言葉も変わってくる。

これは、僕たちが作っている柚子胡椒「YUZUGO」にも通じる話だ。
僕たちのYUZUGOは、徳島県の木頭柚子を使用し、一つひとつ手作りしている。
木頭柚子ならではの豊かな香りとフルーティな酸味。
素材の特徴を生かしながら、手間を惜しまず作っている。
ありがたいことに、自社のECサイトで販売すると、すぐに完売するほど多くの方に支持していただいている。
しかし、僕たちがこれから伝えていきたいのは、単に「おいしい柚子胡椒」ということだけではない。
なぜ木頭柚子なのか。
どんな土地で育ち、どんな生産者が作っているのか。
なぜ手作りにこだわるのか。
そして、そもそも柚子胡椒とは、どのような食文化の中から生まれた調味料なのか。
九州で親しまれ、受け継がれてきた柚子胡椒という日本の伝統的な食文化。
僕たちは、その魅力も含めて伝えていきたいと思っている。
今後は海外への展開も考えている。
世界には、まだ柚子胡椒を知らない人がたくさんいる。
だからこそ、日本にはこんなにも香り豊かで、料理の可能性を広げてくれる調味料があることを知ってほしい。
単に調味料を海外に販売するのではなく、日本の食文化を届ける。
そう考えると、僕たちがやるべきことも少しずつ見えてくる。
もちろん、おいしいものを作ることが大前提だ。
でも、それだけでは足りない。
どんなに素晴らしいものでも、その価値が伝わらなければ、知られないまま終わってしまうかもしれない。
僕は広告の仕事を長く続けてきた。
その中で、商品の魅力を見つけ、それを言葉やデザインにして伝える仕事をしてきた。
今は自分たち自身がものづくりをしている。
作る側になってみると、価値を伝えることの難しさを、以前にも増して感じるようになった。
だからこそ、もっと知りたいと思う。
素材のことも、生産者のことも、食文化のことも。
知ることから、価値は見えてくる。
そして、伝えることで、その価値は誰かに届く。
『野菜ビジネス』は、そんな当たり前のようで、つい忘れがちなことを改めて考えさせてくれる一冊だった。
野菜を知ることは、その背景にある人や社会を知ることでもある。
そして、ものの価値を知ることは、自分たちが何を大切にしていきたいのかを考えることでもある。
何を売るかではなく、どんな価値を届けるか。
これからも、その問いを大切にしながら、ものづくりを続けていきたいと思う。
