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ネーミングを語る48の朝

春はイチゴの季節。

お店に行けばイチゴが並んでいる。

福岡のイチゴといえば、あまおうだ。

あかい、まるい、おおきい、うまい。

それぞれの頭文字をとって「あまおう」だ。

この名前の付け方はテクニカルだ。

あまおうと聞けば、響きとして甘い印象も受ける。

実際はあまいというよりも、あまずっぱいのだが、

名前の印象から「あまいのかな?」と思わせて、他のイチゴと差別化している。

それをスマした感じでアピールしているのだ。

名前いうのは、数ある商品の中から印象を持ってもらうためにとても大切だ。

広告業界では、ネーミングという。

僕がネーミングで影響を受けたひとつにSONYの犬型ロボット「アイボ」がある。

アイボが誕生して、もう25年以上経つ。

アイボとは、aiboと書く。

aiboにはいくつかの意味が含まれている。

①愛のあるロボット②心の相棒 ③aiのロボット

③に関しては、aiという言葉が普及したのは最近だ。開発当初は

ai=人工知能を意識したか分からないが結果的に時代とマッチしている。

日本語を英語のようにすることで「MADE IN JAPANを世界へ。」という印象もある。

このアイボのネーミングの意味の中でも一番決め手となったのが、

心の相棒=aibou =aiboだそうだ。

20年前、僕はこのネーミングの考え方にとても影響を受けた。

ネーミングの考え方としては、いろいろある。

イタリア語やフランス語にしてみたり、神話や物語からつけたり、造語だったり・・・。

でもこのaibou(相棒)という日本語をまるで英語のように

しかも先進性を感じさせながらというこのパターンはそれまでなかった。

今は、日本語を英語のように見せるというネーミングの手法は当たり前だ。

例えば、商業施設のKITTE(キッテ)、ハンドメイドマーケットのminne(みんね?(方言)、

ココナラ、ソコカラとか、今ではたくさん溢れているが、おそらくこのパターンを最初に作ったのは、

aibo(アイボ)だ。

僕もこの手法に影響を受けて、よくネーミングを考えた。

その時、作ったものはまた別の機会に紹介するとするとして、

この「日本語を英語っぽく」というネーミングのパターンが

普及しすぎて、乱雑になっている事例もある。

それが、小林製薬の商品シリーズだ。

僕は一度、このネーミングからくる印象に騙されたことがある。

僕は頬の横というか目の下にシミがある。

そんなに気にしているわけではないが、ただなんとなく「シミが取れるといいなぁ」

とふと思って買ったのが、「ケシミン」だ。

「ケシミン」と聞くと、どんな印象を受けるだろうか?

僕は、シミを消すから、消シミん(ケシミン)。

ネーミングを考える立場として、さっきのaibo=相棒の考えでいくと

そう思うはずだ。

でも、実際は違った。

シミを予防するものだったのだ。

違うやん。だったら、それはヨボシミンやん。

予防は防ぐもの。消すことと違うやん。

虫歯を予防すると、虫歯を治すは違うやん。

消す=治すやん。予防は消すことじゃないやん。

これは、ずるいウソのつき方だ。

僕はすぐゴミ箱に捨てた。

それを笑い話にはしていたが、

それから、なんとなく小林製薬の商品を信用しないようにした。

「この会社の商品シリーズは、ネーミングの付け方がずるい!」とあきさんに力説したこともある。

でも、結果はどうだろうか。小林製薬は、紅麹で大きな問題を起こした。

世界でも犠牲者が出るほどの大問題になった。

やっぱりそうだ。こういう小さなずるいウソを積み重ねていくと

いつか大きな歪みが生まれると僕は思っている。

その直感は当たった。

あーいかんいかん。

イチゴからまさか小林製薬の話になるとは・・・

長くなってしまった。

春はイチゴの季節。

今日は僕の誕生日だ。

48歳になった。

花の匂いと加齢臭を春風に乗せて。

いつかシミを取りに行きたいと思っているこの頃だ。